6月第3週に、相次いで開催されたキャリア各社の株主総会。
各社の業績や、来期以降に向けた取り組みが改めて披露。
株を持つというのは、各社の経営に一定の関与をしていること。
当然、第3者であるメディアや、一般のユーザーとは異なる観点からの質問も出てくる。
こうした質問の数々に、経営陣がどのように答えるのかも株主総会の見どころのひとつ。
株主総会で各社が示した方向性や、ユーザーにも関心の高そうなトピックをまとめてみた。

堅実なKDDI、マルチデバイス、マルチユースを促進
過去最高益を更新し、契約者数、ARPUも順調に伸ばしているKDDI。
2015年もその方針を継続していく。
代表取締役社長 田中孝司氏によると、「今は2013年度から始めた中期の成長戦略の最終年度になっている」といい、
2015年度も営業利益の2桁成長をもくろむ。
また、「新たな成長ステージに向けた取り組み」として、マルチデバイス、マルチユースを促進。
タブレットの強化や、auショップでイーコマースの利用を促す「au WALLET Market」を紹介。
3M戦略
株主からの質問に対し、その先として田中氏が語ったのが、3M戦略の深化。
3M戦略とは、田中氏が社長就任のとき以来掲げ続けてきた戦略で、
「マルチデバイス」「マルチネットワーク」「マルチユース」の頭文字を取ったもの。
具体的には、さまざまなネットワークにつながる端末の複数台の利用を推進しつつ、利用方法も多様化していくような世界観を指す。
田中氏によると、LTEにとどまらず、WiMAX 2+やWi-Fiの環境も整備してきたことで、
マルチネットワークについてはある程度の普及が実現。
一方で、「マルチデバイスやマルチユースは、まだまだ今後伸びていく」という。
「例えば端末も、過去はスマートフォンのシフトが業績をドライブしていたが、スマートフォンだけかというと、
足元ではタブレットが急激に伸びている。
ルーターもけっこう伸びてきた。こうしたことで、マルチデバイスはまだまだ伸ばしていける。
マルチユースは金融事業、物販事業を基本に、今のauのお客様をベース、新たな事業をご提案すること。
これでARPUのアップを図っていきたい。詳細については、来年度(2016年度)の今ごろ発表させていただく」と。
SIMロック解除の影響、au WALLETの収益
株主からは出た質問は比較的地に足の着いたものだったが、
ほかにも、ネットワークの強化方針やSIMロック解除の影響、au WALLETの収益などが尋ねられた。
ネットワークについては、取締役執行役員常務 内田義昭氏が回答。
「LTEとWiMAX 2+を十分に活用して、品質を上げていきたい」としながら、具体像も明かした。内田氏によると、「新たな電波として、
700MHz帯も今年度(2015年度)から基地局を立ち上げつつある」と。
これに加えて、3.5GHz帯も「来年度以降増えていく」とのこと。
SIMロック解除に関しては、田中氏が180日間ロック解除できない期間があることを説明し、
「まだまだ影響が出てくるのに時間がかかる」と語った。一方で、SIMロック解除が可能になれば、端末の割賦を支払い終わったあと、
auからau以外のネットワークを使うMVNOへ転出しやすくなる。
これについて田中氏は「我々としては、ネットワークにおいても差別化ができている。
サポートによって、MNOの方がいいというお客様のご理解が得られるよう、がんばっていきたい」と意気込みを語った。
「MVNOに流れる可能性はなきにしもあらず」(田中氏)。
ここに対しては、「子会社のKDDIバリューイネイブラーも立ち上げた。影響が出るのには少し時間がかかるが、
ご心配のないように準備をしていきたい」とした。
MNOとしての魅力を高めつつ、MVNOでもau回線を選んでもらえるように立ち上げたのがKDDIバリューイネイブラーだと。
au WALLETは「足元は1200万(加入)で、急激に伸びている」(田中氏)としながらも、
代表取締役執行役員副社長の両角寛文氏は「1000万枚は達成しているが、まだ赤字というのが実績」だと語る。
プラスチックカードの発行コストや、郵送代などの先行投資が173億円あり、これをまだ回収できていないという。
ただし、流通総額は着実に伸びており、明るい兆しも見える。両角氏も「決済手数料を伸ばし、黒字化を図りたい」と目標を語った。
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