米国では感謝祭(Thanksgiving)終了後の11月27日にブラックフライデーがスタートし、秋の静寂から一気にクリスマスの装いへと突入している。
賑やかなApple界隈もクリスマスシーズンの特大セール情報がWeb各誌の話題を染めている。
まだiPhone 6sが登場して3カ月も経過していないタイミングで、少し気の早い話題ではあるが、次期iPhoneに関する話題が出始めているので、ここで少し整理したい。

ついに4インチモデルは復活!?
2015年のiPhoneは、シャーシ部分のデザインが大きく変化しないマイナーチェンジサイクルにあたることもあり、あまりシステム全体のリフレッシュには注目が集まらず、わずかに「3D Touch」と呼ばれる触感フィードバックエンジンを加えた新型UI搭載の話題が、新製品発表の数カ月前にフィーチャーされた程度だった。
むしろ、iPhoneとしては初めての「SoC供給のマルチサプライヤー化」が行われた世代だったこともあり、発売前にはSamsungまたはTSMCのどちらのプロセッサが採用され、異なるプロセス製造技術を用いたプロセッサがどのように混在した状態で一般に流通するのかという点に注目していた関係者も多かっただろう。
実際、自分が手持ちのiPhone 6s/Plusがどちらの会社のSoCを搭載しているのかをチェックするツールまで登場し、その結果に一喜一憂していた方もいるかもしれない。
だが2016年に登場が見込まれるiPhoneはメジャーアップデートの世代にあたると考えられ、いわゆる「iPhone 7」的な製品になると考えられている。
iPhone 6からiPhone 6sでは、4.7インチと5.5インチというディスプレイサイズがそのまま維持されたが、iPhone 7ではこれに手を加えられる可能性が比較的高いと考えられる。
1つ言われているのが、4インチモデルの復活。
iPhone 6が登場する1年以上前から何度も噂されては立ち消えになっている話だが、その背景には「小型iPhoneに対するニーズが健在」していることがある。
個人的にもスマートフォンはやや小型のほうが好みなのだが、5インチ前後というサイズを大きいと感じるユーザーもいる。
もともと、iPhoneが大画面にシフトした理由は「Androidらライバルへの対抗」「中国を中心とした新興市場での大画面スマートフォンの人気」にあるといわれ、4.7インチと5.5インチというサイズが必ずしも全ユーザーのニーズを満たすわけではない。
iPhone 5sの時代には、iPhone 5世代の金属シャーシを排したポリカーボネートの「iPhone 5c」という製品がリリースされた。
iPhone 5の金属シャーシはその加工の難しさから高コスト体質だったといわれており、「コスト削減」と「カラーバリエーション増加」という2つのニーズを満たすべく、iPhone 5s世代のローエンドモデルとしてiPhone 5cは開発されたと思われる。
一般ユーザーの間での「廉価版iPhone」という印象は拭えず、値段的にも当時のiPhone 5sと比べて特別安いわけでもなかったため、セールス的には苦戦したと考えられている。
いまだにiPhone 5cユーザーは見かけることがあり、中国でも人気色の「赤」を中心に積極的に使っているユーザーをよく見かけたが、人気商品にはなれなかったようだ。
結局、iPhone 6~6sの時代にはiPhone 5Cの後継にあたる新モデルが登場することはなかったが、このコンセプトをベースに4インチモデルを復活させるという噂はいまだに健在。
MacRumorsなどでは「iPhone 6c」の名称を冠して専用の情報ページを用意している。
Apple Insiderによれば、KGI SecuritiesのアナリストMing-Chi Kuo氏のレポートを引用して、現行SoCの廉価版にあたる「A9」プロセッサを搭載しつつ、2016年前半にも市場投入する可能性があると紹介している。
一方で、この時期に併売されるフラッグシップのiPhone 6sとの差別化のため、この「iPhone 6c」からは3D Touchのような機能が省かれる可能性があることも指摘している。
「iPhone 6c」が本当に存在するかは微妙なところだが、筆者の意見でいえば「以前に比べると市場投入される可能性が高くなっている」と考える。iPhone 6の世代は販売台数の伸びも順調で、あえて在庫リスクや(フラッグシップ製品との)競合リスクを冒してまで(廉価モデルにあたる)iPhone 6cを投入する必要はなかった。
ところが、現行のiPhone 6s、さらには次世代のiPhone 7では、従来までのiPhone販売台数の伸びを期待するのは難しく、おそらくAppleは正念場に差し掛かっていると考える。
その場合、ユーザー層を少しでも拡大するために「4インチモデル復活」や「iPhone 6c投入」を考えても不思議ではないということだ。
フラッグシップの「iPhone 7」の動向
iPhone 6sの次にあたる「iPhone 7」に関する情報は、現在なお少ない。
ただ、おそらく「次世代SoCのA10を搭載」「4.7インチと5.5インチの構成はほぼそのまま維持」という2点で大きな変化はないと予想されている。
「A10」がどのようなプロセッサになるのかは不明だが、GPU機能が大幅強化されたのが「A9」の特徴だったとすれば、A10では「特定処理に特化した機能追加」が特徴としてみられると推測している。
最近、GoogleがAndroid端末向けに独自のSoC開発を進めているという噂が出たが、Appleもまた似たような方向性を目指していると考えている。
iPhoneを製造するのはAppleだけなので、Androidにあるような「プラットフォーム断片化によるソフトウェア開発の難しさ」を気にする必要はなく、むしろ「(特定機能強化による)差別化」の部分が重要だと考える。
具体的にはカメラの映像処理やユーザーインターフェイスまわりの機能強化などだが、単純なプロセッサパワー強化でベンチマークスコアを上げるよりも、ユーザー体験全体を変化させる方向性をAppleは選択するのではないだろうか。
チップまわりという話では、ネットワーク性能の強化がまず確実に行われる。
現行のiPhone 6sではLTE Cat 6の下り最大300Mbpsをサポートしているが、iPhone 7の世代ではCat 9~10の下り最大450Mbpsがサポートされる可能性が高い。
現在iPhoneにモデムチップを供給しているQualcommに加え、Intelのモデムチップも採用してデュアルソース化を進めるという噂が出ているが、少なくともネットワークの技術世代が更新されるのは噂に関係なく、ほぼ確実だと考えられる。
「iPhone 7ではディスプレイに有機EL(OLED)が採用される」というのも、たびたび聞かれる噂。
だが、以前のレポート記事でも紹介したように、現状のサプライヤのOLED供給体制でiPhoneの2億台需要を満たすのはほぼ不可能に近く、現実味が非常に薄い。2018年に切り替えるという噂も出ているが、推測でいえば「OLEDを推進しているグループが観測気球的に流した情報」である可能性も高いと考えている。
3年先の話であれば、Appleが次のディスプレイ技術を模索し始めていても何も不思議ではなく、「OLEDはあくまでその候補の1つ」くらいの位置付けで考えておいたほうがいいかもしれない。
個人的には、ハードウェア技術もさることながら、どちらかといえば「iOS 10」に注目したいところ。
おそらく、前述A10にもあるような改良はソフトウェア部分に変化が現れやすく、iOS新バージョンの噂が登場し始める来年2016年春ごろの動向に注目したい。
次期iOSではApple Payに使われている「NFCアンテナとセキュアエレメント(SE)の開放」やサードパーティ向けSDKの提供も期待されており、このあたりの事情は日本でのApple Payサービスインにも直結している。
このあたりに留意しつつ、ぜひ次期iPhoneとiOSの動向に注目してほしい。
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